【Check Point公式ブログ】2026年6月の世界的な攻撃量増加に伴い、新たなランサムウェアリーダーが台頭

2026年6月のサイバー脅威動向

  • 組織が受けたサイバー攻撃は、世界平均で週2,270件に達し、前月比10%、前年同月比17%増加しました。
  • 教育、政府、電気通信が、引き続き最も攻撃を受けた業界となりました。
  • 地域別では、ラテンアメリカが前年同月比27%増となった一方、アフリカは9%減少しました。
  • 生成AIの利用では、医療・ヘルスケアと電気通信が、機密情報を含む高リスクプロンプトの割合が高い業界となりました。
  • ランサムウェア被害は月間646件に達し、前年同月比33%増加しました。The GentlemenがQilinを上回り、最も活発なグループとなりました。

6月のサイバー攻撃動向:世界各地で攻撃が増加

6月は、5月に見られた短い小康状態を覆す結果となりました。組織は平均して週に2,270件のサイバー攻撃に直面し、前月比で10%、2025年6月と比較して17%増加しました。

この月が注目に値するのは、増加の規模だけではなく、その広がりにあります。特定の地域や業界に攻撃が集中したのではなく、ほぼすべての地域と業界で同時に増加が見られました。この傾向は、攻撃者が特定の標的だけに集中するのではなく、より広範囲に攻撃対象を拡大していることを示しています。

教育は引き続き最も攻撃を受けた業界であり、組織は週平均4,816件の攻撃に直面しました。これは2025年6月と比較して16%の増加です。オープンなキャンパスネットワーク、頻繁な端末の入れ替わり、限られたセキュリティ予算などにより、学校や大学は攻撃者にとって狙いやすい標的であり続けています。

政府機関は週平均2,836件で前年同月比5%増、電気通信は週平均2,835件で13%増となりました。教育、政府、電気通信の3業界は、世界全体のサイバー攻撃において、引き続き大きな割合を占めています。

業界別の世界平均週次サイバー攻撃数 2026年6月と2025年6月の比較
図1:業界別の世界平均週次サイバー攻撃数(2026年6月と2025年6月の比較)/出典:Check Point Research

地域別の攻撃動向:ラテンアメリカが最も高い水準

ラテンアメリカは、最も攻撃を受けた地域としての位置を維持しました。組織が受けた攻撃は週平均3,501件で、2025年6月と比較して27%増加しています。

APAC(アジア太平洋地域)は週平均3,060件で、前年同月比5%増となりました。一方、アフリカは週平均3,008件で前年同月比9%減少し、調査対象となった5地域の中で唯一、攻撃件数が減少しました。

ヨーロッパと北米では大幅な増加が確認され、それぞれ前年同月比22%増、14%増となりました。アフリカを除くすべての地域で、サイバー攻撃が前年を上回っています。

地域別の組織あたり週次サイバー攻撃数 2026年6月
図2:地域別の組織あたり週次サイバー攻撃数(2026年6月)/出典:Check Point Research

生成AIへの露出:日常業務がもたらす情報漏洩リスク

生成AIの利用拡大は、日常的な業務行動がどのようにセキュリティリスクにつながるかを示す代表的な例となっています。

ここで問題となるのは、攻撃者によるAIの悪用やAIモデル自体の欠陥ではありません。従業員が生成AIのプロンプトに、どのような情報を入力しているかという点です。

顧客情報、社内文書、ネットワークやインフラの構成情報、法務資料、財務データ、人事情報などが、一般公開された生成AIサービスや、企業が管理していない生成AIツールに入力される可能性があります。

2026年6月のデータからは、次の4つの主要な傾向が確認されました。

  • 高リスクプロンプトは珍しくない:企業ネットワークから送信された生成AIプロンプトの26件に1件が、機密データ漏洩につながる高いリスクを含んでいました。世界全体の高リスクプロンプト率は3.9%です。
  • リスクは幅広い組織に及んでいる:生成AIツールを定期的に利用している組織の85%で、高リスクプロンプトの送信が確認されました。
  • 機密性の高い情報が頻繁に含まれている:さらに27%のプロンプトには、潜在的に機密性の高い情報が含まれていました。
  • 生成AIの利用は拡大している:各組織では、過去1か月間に平均7種類の生成AIツールが利用され、利用者1人あたり平均78件のプロンプトが送信されました。

この利用量は、多くの企業において生成AIがもはや試験的なツールではなく、日常業務の一部になっていることを示しています。一方で、データ保護ポリシー、従業員教育、アクセス制御、情報漏洩防止などの対策が、生成AIの急速な普及に追いついていない状況も浮き彫りになっています。

地域別に高リスクプロンプトの割合を見ると、ラテンアメリカが5.2%で最も高く、世界平均の3.9%を大きく上回りました。ヨーロッパは世界平均と同じ3.9%、北米は3.6%、APACは3.5%でした。

地域別の生成AI高リスクプロンプトの割合 2026年6月
図3:地域別の生成AI高リスクプロンプトの割合(2026年6月)/出典:Check Point Research

生成AIのプロンプトに含まれていた機密情報の中では、個人情報が最も多く、調査対象組織の80%で確認されました。

続いて、ネットワークおよびインフラストラクチャの詳細が62%、法務・規制関連資料が61%、財務データが60%、従業員情報が57%でした。

これらの結果は、従業員が生成AIを汎用的な業務アシスタントとして利用し、本来であれば企業の情報管理ポリシーによって保護されるべき情報を入力している実態を示しています。

生成AIプロンプトに含まれる機密データの種類
図4:生成AIプロンプトに含まれる機密データの種類/出典:Check Point Research

業界別では、医療・ヘルスケアが5.7%で最も高いリスクを示しました。電気通信とビジネスサービスがそれぞれ5.1%、情報技術が4.1%で続いています。これらの業界はいずれも、世界平均の3.9%を上回っています。

業界別の生成AI高リスクプロンプトの割合 2026年6月
図5:業界別の生成AI高リスクプロンプトの割合(2026年6月)/出典:Check Point Research

生成AIに関する情報漏洩リスクは、特定の部門や業務だけに限定されるものではありません。個人情報、技術情報、法務情報、財務情報、人事情報など、企業が保有する幅広いデータに関係しています。

生成AIの業務利用が今後も拡大する中で、プロンプト単位での可視化、利用状況の監視、入力データの制御、従業員教育、社内ガイドラインの整備が重要になります。

ランサムウェア動向:新たなリーダーの台頭

ランサムウェア統計に関する注意事項
本項のデータは、二重脅迫型ランサムウェアグループが被害者情報を公開するデータリークサイト、いわゆる「shame site(暴露サイト)」を基に集計されています。公開されていない被害は含まれないため、実際の被害件数とは異なる可能性があります。

2026年6月に確認されたランサムウェア被害は合計646件で、2025年6月と比較して33%増加しました。

業界別では、ビジネスサービスが報告された被害者の31%を占め、最も大きな割合となりました。次いで、消費財・サービスが16%、産業製造が14%でした。

過去3か月間の推移では、消費財・サービスの割合が2026年4月の14%から、5月の15%、6月の16%へと継続的に増加しています。

政府機関も、4月の4.0%から5月の4.3%、6月の5.4%へと増加しており、ランサムウェア被害が拡大している業界の1つとなっています。

業界別ランサムウェア被害者の割合 2026年6月
図6:業界別ランサムウェア被害者の割合(2026年6月)/出典:Check Point Research
業界別の世界ランサムウェア被害者シェア 2026年4月から6月
図7:業界別の世界ランサムウェア被害者シェア(2026年4月~6月)/出典:Check Point Research

地域別では、北米が報告されたランサムウェア被害の44%を占めました。APACが23%、ヨーロッパが22%で続いています。

APACは、すべての地域の中で最も大きな変化を示しました。世界全体に占めるAPACの被害者割合は、2026年4月の16.8%から6月には22.6%へ上昇しており、わずか2か月で3分の1以上増加しました。

地域別ランサムウェア被害者の割合 2026年6月
図8:地域別ランサムウェア被害者の割合(2026年6月)/出典:Check Point Research

最も活発だったランサムウェアグループ

The Gentlemenは、2026年6月に最も活発だったランサムウェアグループで、公開された攻撃の17%を占めました。これにより、11%だったQilinを上回りました。

LockBitも大幅な増加を記録し、前月の公開攻撃に占める割合が1%から7%へ上昇しました。その結果、LockBitは3番目に活発なランサムウェアグループとなりました。

The Gentlemen

The Gentlemenは、2025年半ばにロシア語圏の攻撃者「Hastalamuerte」によって設立された、急成長中のRansomware-as-a-Service(RaaS)グループです。

同攻撃者は、独自のプラットフォームを立ち上げる以前に、Qilin、Embargo、LockBit、Medusa、BlackLockなどのアフィリエイトとして活動していたとされています。

The Gentlemenは複数のサイバー犯罪フォーラムでアフィリエイトを積極的に募集しており、RaaSプロバイダーとしてだけではなく、Initial Access Brokerとしても活動しています。

同グループは、CVE-2024-55591の脆弱性を悪用して事前に侵害されたとされる約14,000台のFortiGateデバイスへのアクセスを、アフィリエイトに提供していると報告されています。

データリークサイトでは320件を超える被害者を公表しており、Check Point Researchの分析では、実際の侵害件数は1,570件を超える可能性があると推定されています。

The Gentlemenのランサムウェアは、Windows、Linux、VMware ESXiを標的とするクロスプラットフォーム型です。2026年5月の攻撃者側の発信では、BYOVDを利用した強制的なEDR無効化手法から、より検知されにくいユーザーランドベースの回避手法へ移行する方針が示されています。

また、被害地域の分布も一般的なランサムウェアグループとは異なります。米国の被害者割合は約12%で、ランサムウェア全体の平均とされる約50%を大きく下回っています。

これは、特定の地域を意図的に狙っているというよりも、侵害済みFortiGateデバイスの分布に影響された、デバイス起点の標的選定モデルを反映している可能性があります。

Qilin

Qilinは、2022年から継続的に被害者情報を公表している、比較的歴史の長いRaaSグループの1つです。

当初は「Agenda」の名称で活動していましたが、2022年9月までに「Qilin」へ名称を変更し、Rustベースの暗号化機能を導入しました。

専用の管理パネルを通じて、暗号化機能、交渉用インフラストラクチャ、サポートサービスなどを含む一連の攻撃ツールをアフィリエイトに提供しています。

RansomHubの活動縮小後、Qilinはアフィリエイト募集を強化しました。2025年3月以降、データリークサイトに掲載される被害者数が大幅に増加しています。

LockBit

LockBitは、2019年9月に活動を開始し、2021年6月に機能を更新したRansomware-as-a-Serviceです。

LockBitは、世界各国の大企業や政府機関を標的とする一方で、ロシアおよび独立国家共同体の組織を攻撃対象から除外しているとされています。

LockBitは、Tor上のデータリークサイトに被害者情報を掲載し、身代金が支払われない場合に盗んだデータを公開するまでのカウントダウンを表示します。

また、LockBitは暗号化処理の速度が非常に速いランサムウェアの1つとして知られています。

主要な疑問への回答

6月に、ほぼすべての地域でサイバー攻撃が増加したのはなぜですか?

今回の増加は特定の地域だけに集中したものではなく、世界的に広範囲で発生しています。これは、攻撃者が単一の地域や業界の弱点に集中するのではなく、標的を広げていることを示しています。

ラテンアメリカとヨーロッパは前年同月比で特に大きく増加しました。一方、アフリカは調査対象地域の中で唯一、攻撃件数が減少しました。

生成AIによるデータ漏洩リスクが最も高い業界はどこですか?

医療・ヘルスケアが最も高く、生成AIプロンプトの5.7%が高リスクと判定されました。

電気通信とビジネスサービスがそれぞれ5.1%、情報技術が4.1%で続きました。これらの業界はいずれも、世界平均の3.9%を上回っています。

The GentlemenがQilinを上回った理由は何ですか?

The Gentlemenは、事前に侵害された多数のデバイスへのアクセスをアフィリエイトに提供し、積極的なアフィリエイト募集を行うことで、短期間に活動規模を拡大しました。

2026年6月には、公開された攻撃の17%を占め、11%だったQilinを上回りました。

ランサムウェア被害は、現在も北米に集中していますか?

北米は引き続き最も大きな割合を占めており、報告された被害者の44%が北米の組織でした。

ただし、以前と比較すると集中度は低下しています。APACの割合は、2026年4月の16.8%から6月には22.6%へ急増しており、最も速いペースでランサムウェア被害が拡大している地域となっています。

Check Point社の見解:2026年6月の脅威動向をどう読み解くか

2026年6月の統計は、サイバー攻撃が特定の地域や業界だけではなく、世界的かつ継続的に増加していることを示しています。

しかし、重要なのは攻撃件数の増加だけではありません。ランサムウェアの世界では、活動の中心となるグループが入れ替わりつつあります。わずか1年前にはほとんど知られていなかったグループが、現在では最も活発な脅威の1つとなっています。

また、生成AIに関するリスクは急激に増加しているわけではないものの、多くの組織で高い水準のまま定着しつつあります。従業員による生成AIの利用が拡大する一方で、企業側の情報管理、可視化、ガバナンス、技術的な制御が十分に整備されていない状況です。

これらの問題は、単一のセキュリティ製品や一時的な対策だけで解決できるものではありません。

ネットワーク、クラウド、エンドポイント、電子メール、生成AI、ユーザー行動を横断して可視化し、攻撃を未然に防止する包括的なセキュリティ対策が必要です。

変化を続けるサイバー脅威に対応するためには、インシデント発生後の対応だけではなく、予防を重視した多層的なセキュリティ戦略を構築することが重要です。


出典・翻訳について

本記事は、Check Point Software Technologies Ltd.の公式ブログ記事を、同社の許諾のもと、株式会社JHが日本語に翻訳・編集して掲載したものです。掲載されている図表の著作権は、Check Point Software Technologies Ltd.に帰属します。

原文: A New Ransomware Leader Emerges as June 2026 Attack Volumes Climb Worldwide